研究テーマ

バイオインスパイアード材料の創製と医療応用

背 景

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近年、生体機能の巧妙な仕組みが分子レベルで明らかになり、その基本原理が化学の方程式で表せることがわかってきました。このような生体機能に啓発されてそのシステムを設計、応用する研究が、バイオインスパイアードサイエンスです。

生体分子システムは確かに優れていますが、様々な生命現象維持のためにむだも多いシステムです。必要な用途に特化したシステムであれば、生体に迫る、そして凌駕するような人工分子システムの開発も夢ではありません。生体分子システムの人工的再構築とその医療応用、それは次に向かうべき科学の大きな目標のひとつでもあり、生命現象の解明にも少なからず貢献するものと考えます。 我々のグループでは、”生体システムへの挑戦” から生まれてくる新しい概念の創出と新規分子システムの創製、さらにその原理にもとづいてドラッグデリバリーシステム(DDS)を含む新規バイオマテリアルの開発を目指す研究を行っています。

ナノゲル工学:DDSと再生医療への応用 | タンパク質工学・シャペロン機能工学 | 脂質・リポソーム工学

ナノゲル工学:DDSと再生医療への応用

世界に先駆け、我々はナノサイズのゲル微粒子(ナノゲル)の開発を行いました。また、ナノゲルフイルム、ナノゲル架橋ゲル、ハイブリッドナノゲルなどの全く新しい概念の集合体ヒドロゲルを創成しています。さらにこのようなナノゲルを、癌免疫治療におけるタンパク質キャリアーや、人工細胞外マトリックス・再生医療へ応用展開する研究を推進しています。癌免疫治療では、すでに臨床研究が進められ多糖ナノゲルの有用性も実証されつつあります。

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疎水化高分子によるナノゲルの模式図

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ナノゲルによる細胞内デリバリー (左:タンパク質、右:量子ドット)

タンパク質工学・シャペロン機能工学

ポストゲノム時代の今、プロテオーム創薬をはじめとするアプローチを展開するためには、タンパク質の構造、機能解明が重要です。我々は、蛋白質の構造形成 や集合状態を助ける人工分子シャペロンシステム(シャペロンインスパイアードマテリアル)を設計し、ポストゲノム時代のタンパク質機能解析ツールの開発を 行っています.自己組織化ナノゲルが、天然の分子シャペロンであるGroELと同様な機能を果たすことが明らかとしています。シャペロン機能は、DDSに おけるタンパク質デリバリーにおいて重要な概念であることを提唱しています。膜タンパク質に対するリポソームシャペロンの開発も行っています。

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脂質・リポソーム工学

人工細胞膜からなる細胞類似の分子集合体(リポソーム、チューブ、ネットワーク)は、遺伝子やタンパク質などをはじめとする様々な生体分子を効率よく集積 するためのバイオ基板です。ガラスやシリコンなどに代わりこの「人工細胞」を基板に用い、微量の化学プロセスを安全、迅速、かつクリーンに取り扱うことが できるバイオチップを開発しています。タンパク質の生産、組み込み、放出を効率よく行える人工細胞の創成を通じ、プロテオーム創薬やテーラーメード医療へ の応用に向けた次世代ナノシステムを具現化します。

20081208-lipo1_sリポソームネットワークの蛍光顕微鏡写真(左)および三次元人工細胞アレイからなる自己集積型化学チップの概念図